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その高いクオリティに心ときめかせた会員誌 「EXTENSION」。
懐かしのバックナンバーに再会。

引き込まれたくて止まない世界観に、大人ごころがまた、満たされる。

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 2008年5月 

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メルカート(市場)には、旅の誘惑が凝縮されている。その土地の人々が、生活に根差したモノたちが、口々に風土・歴史・文化を、そして人情を語る。それがデザイン王国イタリアのモノたちとなれば、なおさらだ。誘惑は饒舌で坑しがたく、旅人はサイフをカラにしかねない。たとえばローマ、ヴィットリオ広場を取り巻く常設メルカートには、青果物・肉・鮮魚・衣類・その他各種道具類が並んでいた。活気が溢れ、美しきシニョリーナが振り撤く愛想もあった。聖パウロは『ローマ人への書』の中で「神の国は飲食にあらず、義と平和と聖霊によれる歓喜とにあるなり」と言った。だがしかし、ローマ人の歓喜は飲食にあるように思えた。この国では、ノミの市も盛んである。フェラーラのノミの市は、時計・ランプ・家具などの古道具と絵葉書・書籍・雑誌を並べ、趣味の逸品を掘り出す楽しみに人々は夢中だった。また早朝、リアルト橋を渡って行ったヴェネツィアの青果・鮮魚市は、対岸の聖ソフィア広場とカ・ドーロ(黄金の邸宅)を背に、ゴンドラも行く運河から荷揚げされる光景が、他とは格別の印象であった。


 

2008.05.30 15:04:04

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ヴェネツィアは117の小島と、その間を縫う175の運河、そして島々を結ぶ400以上の橋とから成る。この街は、一説に100年後には水面下に没するといわれる。ここもまた、白分の足で歩く街だ。島と島を結ぶのは、橋と水上バスと舟のタクシー。街にできる限り接近した後、クルマはすべて街の入口の大駐車場に置くことになる。即座に水上タクシーをチャーター、カジノの島リドへ直行という一攫千金夢見コースもある。しかし、ご注意。ジャケット、タイ、革靴にパスポート等の身分証明書がなくては入れない。リドは、ヴィスコンティの『ヴェニスに死す』で有名。だが、大運河に架かるリアルト橋やサン・マルコ広場も、数々の小説・映画に描かれている。季節によっては水浸しになるサン・マルコ広場は、2月のカルネヴァーレには、仮面と中世風衣装に身を包んだ人々で埋まる。が、普段は似顔絵や風景画描きのイーゼルが立ち並ぶ。ヴェネツィアはまた、美術と音楽の街でもある。オペラ劇場ラ・フェニーチェやアカデミア美術館へ橋を渡っていると、クルマのない街の静けさを破り、時にゴンドリエーレ(ゴンドラの船頭)の歌うカンツォーネが響く。ゴンドリエーレは、運河を漕ぎ行くときに"ほら、あれがマルコ・ポーロが住んでいた家さ"と、岸辺の一軒を指し示すだろう。一攫千金の夢から覚め、かくて我々EXTENSIONもジパングならぬ新大陸アメリカへと夢を馳せるのであった。


 

2008.05.26 11:33:42

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モデナ−この街を名高くしているのは、"速さ(スピード)"である。
フェラーリ、マセラーティ、世界に名だたる速さを、この街は生み出しているのだ。それゆえか、モデナはイタリア上位の富裕な街である。
豊かさは、芸術の美と食の美とを生む。夕食に入ったリストランテの売り物ボリート・ミスト(茄で肉の盛り合わせ)は、その量で我々の目を満腹にし、次いでただ一口で溜息を吐かせた。快晴の翌朝、アルファ・ロメオ75を駆って見に行った『第1回イタリアン・クラシックカー・サローネ』は、まさしく速さと美の競演だった。一時代を画したフェラーリ、アルファ・ロメオ、その他垂涎(すいぜん)の欧州車が美女を従えて並んでいた。ヴェネツィアへの途中、立ち寄ったフェラーラのSHELLサーヴィス・ステーションで、クルマにも遅い昼飯を与える。
"Pieno, perfavore(満タンにしてくれ)"と言うと、若いシニョールは我々のカメラを見て"やァ、いいカメラだね。ぼくは日本製のもっといいカメラを持ってるよ"と人なつこく言った。そこは家族経営のステーションだった。事務所の戸口で、マンマもにこやかに笑う。カメラを向けると"娘のほうが綺麗よ"と。美しい娘は、パオラと言った。パオラの笑顔に見送られ、我々はヴェネツィアへと急いだ。


 

2008.05.16 09:50:51

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ヨーロッパ人は、一度はフィレンツェに住むことに憧れるという。
その魅力は、恋に似ている。街の蠱惑(こわく)の源は、旅行案内書を離れたところにあろう。迷い込んだ路地に、思わぬ出会いと発見の快感が待ち構えているのだ。お勧めはフィレンツェ大学裏手やピッティ宮殿、数ある美術館周辺の小路。ルネサンス期工房の名残を伝える伝統の職人芸が、そうした路地裏に脈々と息づいている。<美術工芸品修復>の小さな看板を掲げた工房を訪ねてみるがよい。額縁や軒・廂(ひさし)・壁などの装飾材料(オーナメント)が所狭しと置かれた中に、白分だけのインテリアを創造する素材が見出せる。埃まみれのショウ・ウィンドウに、見捨てられていた美を掘り出すこともできよう。
この古都を満喫しようとするものは、白らの足で歩くほかはない。
旅行者は、クルマを市外の駐車場に入れておくのが原則。探索の路地で、ヴェスパに打ち跨がり走り去る、美貌のシニョリーナの残香に襲われるとき、フィレンツェはその魔的魅力をいやまし、繚乱の迷宮へとあなたを誘い込む。


 

2008.05.09 13:27:10

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ローマの朝は、早い。晩餐(ばんさん)の卓を午前1時に辞して数時間後、通りを広場を人とクルマが埋める。
かれらは、いつ愛しあうのだろう。そのためのシエスタ(長い昼休み)さ、という声がある。
午前7時、我々も街角のBARに立ち、カフェ・エ・ラッテに舌を焼き、片手のコルノ(クロワッサン)をぱくつく。外で働くすべてのイタリアンに、バールは必須だ。喫茶店とスナックとバーが合体したような、しかも家庭の延長ともいえる生活の基盤である。
一杯のカフェ、一切れのパニー二で朝と昼をしたため、一杯のヴィノあるいはキャンパリで勤め帰りの喉を潤す。ローマ郊外、ムッソリー二原案に基づく計画都市EUR(エウル)にある、SHELLサーヴィス・ステーションの経営者フェリーチェ氏が、10年前から彼の店にバールを併設しているのも、そうした所以である。
街の片隈の小さな広場(ピアッツァ)に朝市が立っている。近郷から集まった採れたての野菜果物が、面に年輪を刻んだマンマやパードレの手で売られている。買い手は出勤途上のファッショナブルなシニョリーナだったりする。傍らを晴れやかな笑顔で音楽のように囀り(さえずり)、天使(アンジェロ)のような美少女が学校へ行く。
神よ、早起きに感謝します。


 

2008.05.02 13:55:31

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