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NY発!ウォールストリート・アナリストの目

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ドル安がアメリカと世界経済に及ぼす功罪とは?

自他共に認める、世界経済の中心国アメリカ。その中でも、ニューヨークマンハッタン島に位置する「ウォールストリート」は、全世界のマーケット情報や人材が集まる金融の中心だ。そんな地において、第一線で活躍するアナリストたちが、日本からは見えにくいアメリカの実像、そしてアメリカから見た世界の微動・激動をレポートする。

今月のアナリスト

リチャード・アイリー (Richard Iley)

イギリス出身。英国財務省に勤務後、ABNアムロ証券、ロンドンのBNP パリバ証券を経て、現在、ニューヨークのBNP パリバ証券にて、顧客やトレーダーにアメリカやカナダの金融、経済、政治情勢と予測を伝えている。フィナンシャルタイムス、BBC、CNN、CNBC、インターナショナル・ヘラルドトリビューンなど主要なメディアでコメンテーターを務める米国屈指の著名アナリスト。

はじめまして。BNPパリバ・ニューヨークのリチャード・アイリーと申します。今回は私が、ドルの下落がアメリカやその他の国に与える影響について、簡単にお話をしたいと思います。

まず、ここのところ、なぜアメリカのドルが安くなっているかということに関して説明します。その主な理由はいくつか挙げられていますが、直接的な理由としては、FRB(連邦準備理事会)が公定歩合を積極的に引き下げていることが挙げられるでしょう。FRBは、3月中旬にも公定歩合を3.50%から3.25%に引き下げることを決定し、即日実施しました。その結果、ドルの対ユーロ相場は最安値を更新したのです。

FRBが、なぜこのようなことをするのか? それは、投資、特に外国から直接投資の対象国として、アメリカが世界のどこの国よりも魅力的となるレベルまで米ドルの価値を下げる必要があるので、積極的に公定歩合を引き下げているのです。

3月、ブッシュ大統領も会見で「我々はドル高で、強い経済の方向に持っていくための政策を実行する」と述べたが、その一方で公定歩合の引き下げをせざるを得ないのが、悩めるアメリカの状況を表している。(CNBCニュースより)

 

では、なぜ、そこまでして外国からの投資を喚起したがるのか? それは、アメリカ経済を長期的に見た場合、経常収支赤字が膨大なため、その赤字を穴埋めする資金が必要とされていることが大きな理由として考えられます。アメリカの経常収支赤字の対名目GDP比率は、5.5パーセントにも上ります。アメリカ経済は、いわば海外からの借金に頼って回っているということです。最近、IMFが発表したデータは、世界中の資金の50パーセントが、アメリカに流れ込んでいる様子を示していました。米国の経常収支の赤字が、いかに膨大なものかおわかりになるでしょう。

ドル安が市民生活と国内経済に与える影響

一般的には、アメリカが抱える巨額な双子の赤字(財政赤字と経常収支の赤字)がドル安の引き金になっているとみられています。その双子の赤字拡大は、アメリカの消費者(国民)が、貯蓄よりも消費に向かうという嗜好を反映しています。つまり、消費者の資金がアメリカの強大な金融市場に流入せず、結果、海外からの流入に頼ってしまっているわけです。赤字拡大は政府の政策に直接起因するものではなく、民間部門が生み出してきたものなのです。

では、アメリカの家庭の貯蓄率は、なぜ極端に低いのか? アメリカでは近年、資産価格、特に住宅の評価額がとても高いレベルにあったため、アメリカの消費者はその資産を頼りにして、過去10年の間、貯蓄をしてこなかったのです。しかしその後、住宅市場のバブルが崩壊し、資産価格は通常のレベルへと是正されつつあります。つまり、現在、資産価格は期待していたほど高くないため、消費者は将来のことを考えて貯蓄せざるを得ない状況になっています。これは、双子の赤字を解消していくためには、必要な状況です。

また、アメリカの家庭の貯蓄率が低い理由のひとつとして、簡単にお金を借りられたことも考えられます。数年前は貸し出しの利率がとても低く、また規制が緩いため、誰もが借りられました。資産価値の高い住宅を担保に入れてお金を借りれば、かなりの金額を借り入れることも可能でした。そうした銀行の貸し出しは金融機関によって行われているもので、FRBが規制しているものではないのです。こうした点も、家庭単位で赤字を生み出し、それがアメリカ経済に影響を与えてきた要因です。

ところが、ドルが下落したことで、アメリカ国内のガソリンや輸入品が値上がりしたため、消費者は今まで以上にお金が必要になりました。結果、これまでのようにむやみに消費するのではなく、支出を抑制しなくてはならなくなるのです。こうした流れは、ドル安による、アメリカ経済の調整を意味します。ドル安により、消費が圧迫されることが重要なのです。

一方で、ドル安により、多くの人々の収入は落ち込み、職を失う人も増えています。このような傾向が、いっそう消費者の支出を抑制しているのです。少なくとも、アメリカは07年の後半からすでに、3カ月間リセッション(景気後退)に入っているのです。このように、ドル安は長期的にみれば、アメリカ経済の調整役となりますが、短期的にみれば、国民生活を苦しめることになっています。

中国には福音、EUや日本には厳しい面も

先日行われたばかりのG7でも、急激なドル安に対して、懸念を表明した。国内の経済ニュース番組でもトップ扱いで報じられた。(CNBCニュースより)

 

安くなる一方の米ドルに対して、他の通貨が強くなっています。国際的にはどのような意味があるのでしょうか?

たとえば、中国にとってはいい話でしょう。通貨が強くなることにより、中国経済のバランスを取り戻すことができます。現在、中国経済は、輸出や海外への投資に頼っています。しかし、自国の通貨が強くなることにより、輸出が今までほど伸びなくなるため、いやが応でも内需拡大により経済を成長させていく必要に迫られます。あれだけの経済大国なのに、国民生活はとても豊かであるとはいえないのは、この点が不足していたからです。今後は、まだまだ伸びる可能性を秘めている、国内市場の発展や中国の人々の消費が促進されるでしょう。

一方、EUにとってドル安は、もう少し複雑な問題です。中国と同じように、EUからアメリカへの輸出が抑えられてしまうも、中国のように内需拡大はさほど見込めないことから、EUの景気は後退局面に入ります。しかし、ユーロ高は、EU内のインフレを抑制させる働きもあることは付け加えなくてはなりません。これは、巨大な輸出産業を抱える日本においても、ほぼ同じことがいえると思います。また、よくいわれることですが、円高になることで、国外で生産したほうが安くなるということから、産業の空洞化が起こりうるわけです。

ユーロ高ドル安のため、アメリカ人にとっては、海外旅行、特にヨーロッパへの旅行がとても高価なものとなっています。私はイギリス人で、イギリスには昨年の11月に帰りました。ドルが安いということもあり、アメリカで暮らしている私にとっては、ロンドンの物価はとても高いものでした。しかし、イギリスもアメリカに似てきています。最も似ているのは、住宅の価格が下落していることです。3月などは、価格が鋭く落ち込みました。来年にかけてイギリス経済は、苦しい局面を迎えることでしょう。イギリスもアメリカと同じように景気後退にあります。イングランド銀行(英中央銀行)はすでに利下げを行っています。アメリカ、イギリス、日本は、すでにリセッションに入っているのです。ドル安に翻弄されるこうした国々は、もはやかつてのように経済大国と、呼ばれることはないでしょう。

(構成/神林毅彦)

おまけコラム ウォールストリートのアナリスト事情(5)

結婚生活も分析する辣腕アナリスト

著名なウォールストリート・アナリストであるティム・ケリスは、結婚生活に関する「アナリスト」でもあり、『結婚生活における男性』というラジオ番組の司会も務めている。彼は、そうした番組や著書の中で、株価の動向と同じように、結婚生活の浮き沈みやその乱高下を分析してきた。

そのケリスは最近、『平等:幸せな結婚生活の探求』という本を出版した。同書には、どのように夫婦間の危機を乗り越え、幸福な生活を送ることができるようになるかが説明されている。また、離婚へと続く夫婦不和の連鎖を断ち切り、充実した結婚生活を永続させるための、少し極端ではあるがシンプルな解決策を紹介している。離婚率50パーセントのアメリカでは、なぜ結婚生活がうまくいかなくなるのか、どのようにすれば交際を始めた頃の幸せな状態に戻ることができるのか、そのようなことを学ぶことはとても重要だとケリスは主張する。

金融アナリストが著わした
『平等:幸せな結婚生活の探求』

 

「結婚生活を崩壊に導くものは口論だ」とケリスは見ている。そして、前向きな関係の夫婦は、二人の間の必然的な摩擦を「意見の相違」としてとらえるが、関係が良好でない夫婦は、そこから「口論」に発展するという。

ケリスは大学を卒業すると、電気通信業界で9年間働いた。その後、テキサス州ダラスの南メソディスト大学大学院でMBAを取得し、ウォールストリートで半導体を専門にする初めてのアナリストとなった。アナリストとしての絶頂期に理想像に近い女性に出会い結婚、だが、その女性と離婚後に結婚問題に取り組むようになった。その後、彼は再婚し、今も妻と息子とともに暮らしている。

そんな中、ケリスは、ウォール・ストリートで働く人々の中に、多くの幸せな夫婦がいることに気づく。彼らが幸せな結婚生活を送っている理由は、裕福だからだけではなく、仕事に熱心に取り組んでいる結果だという。また、アナリストとして、企業や組織がなぜ最高あるいは最悪の状態に達するのかを学んできたが、その多くの例が夫婦関係にも当てはまるそうだ。彼の本が日本で翻訳されることを期待する人も多いのではないだろうか?

英語が話せなくても、ドルは買える <松井証券のNetFx>

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