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2008.01.17
自他共に認める、世界経済の中心国アメリカ。その中でも、ニューヨークマンハッタン島に位置する「ウォールストリート」は、全世界のマーケット情報や人材が集まる金融の中心だ。そんな地において、第一線で活躍するアナリストたちが、日本からは見えにくいアメリカの実像、そしてアメリカから見た世界の微動・激動をレポートする。
今月のアナリスト
ブラドリー・ルービン (Bradley Rubin)
1969年生まれ。フランスを拠点とする世界屈指の金融グループ「BNPパリパ ニューヨーク」の自動車産業スペシャリスト。ハートフォード大学卒業後、サフォーク大学で財政学の修士号を取得。専門は、自動車産業とハイテク産業。主な業務は、分析レポートの執筆。朝6時半には出社して、11時間は働くという。2人の娘、アランナ(11)とエミリー(8)を愛するパパでもある。
こんにちは。BNPパリパ・ニューヨークのブラドリー・ルービンです。お元気でしたか?今回も私がお送りいたします。
前回は、変革期にあるアメリカ自動車産業と労働組合の関係が、市場に与える影響に関してお話しました。今回は、サブプライムローン(信用力の弱い借り手向けの住宅融資)問題で、アメリカ国内の景気が悪くなるのではと心配されている中、アメリカの投資家は、08年、どのような投資行動を取るのかをお話したいと思います。
まず、アメリカは今、住宅市場が在庫・供給過多状態です。簡単にいえば、サブプライムローンの返済能力がない人たちが担保にしていた家を手放したため、その家が市場に溢れ出しているわけです。そのため、住宅建築業者や住宅融資に関連している会社の業績が、今後さらに悪化していくことは目に見えています。こうした企業への投資は、引き続き避けられるでしょう。
また、当然のことながら、サブプライムローン問題で直接的に巨額な損失を被った、多くの銀行や証券会社などの金融機関に対しても、投資家は慎重な態度を取っています。投資家たちは一般的に報道されている以上に、各金融機関の損失の大きさや業績の悪化状況などを細かく調べており、その結果、当面は投資しないことが最も安全という結論に達しています。
では、逆に投資対象になる分野はどこでしょうか。私は、技術関連やIT関連で、負債の少ない会社だと思います。景気減速の懸念が高まるアメリカでも、そういった分野の中には、好調な業績を維持している会社は少なくありません。逆風の中で、それはまさに、真の強さをもった企業といえるでしょう。
GE(ゼネラルエレクトリック)やトヨタ自動車、アップルのような製造業の好調さも、続くはずです。
さらに私が注目しているのは、鉱業、金属業界。この業界は全般的に業績が向上すると思われますし、特に、金や銀などの資源を扱っている企業が好調になると思われます。その理由は、以下のものです。
アメリカの景気が弱含みであるため、米連邦準備理事会(FRB)は利下げをするでしょう。よってドル安となります。これにより、金や銀,鋼板などの金属価格が上がります。
また、車の販売車数が下がるので、鋼鉄会社はそれを見込んで在庫を減らしています。この動きが、さらに鋼板の値段を上げると思われます。
ルービンが注目するGEとアップルの最近の事業動向は、「ニューヨークタイムス」のウェブ版でも報じられることが少なくない。
投資は日本に流れるのか?
さて、日本のみなさんが気になるのは、そんなサブプライムローン問題の影響下にあるアメリカの投資家が、日本を含む、グローバル市場への投資において、どのような態度を取るのか?ということではないでしょうか。
結論から言ってしまえば、国内市場を避けた投資家の資金が、顕著といえるほどグローバル市場へと流れていくかといえば、そうはならないでしょう。
まず、前提として、アメリカ人投資家は海外投資に非常に消極的という状況があります。現在、海外投資のベースとなっているのが、401K(確定拠出型年金)などですが、そこでも大多数のアメリカ人の投資の対象は国内市場に限られています。その要因は単純で、海外市場に関する彼らの知識が不足しているから。そもそも興味がないので、知識を蓄えようというモチベーションも低いんです。
加えて、ほとんどの個人投資家は、海外投資の方法すら知らないというのが実情です。証券会社も、投資家を積極的に海外投資に引き込もうとはしていません。大手証券会社の多くが、グローバル市場への投資の窓口を用意していないことからも、それがわかります。富裕層を対象にした比較的小規模な証券会社が、海外投資を専門的に扱っているような状況です。日本市場、上海市場などへの投資も、そうした会社を通して、少数派がやっているに過ぎなく、今年もその状況は大きく変わらないというのが、ウォールストリートでの実感です。
サブプライムで儲けた人たち
それにしても、サブプライムローン問題では、モルガン・スタンレーやメリルリンチといった大手証券会社や銀行が苦しんでいるのに、ゴールドマン・サックスだけは、うまくこの危機を乗り切ったようですね。彼らは、サブプライムローン問題の健在化に直接的な影響を受ける、住宅ローン担保証券の下落をいち早く予知し、逆張りをすることで、40億ドル(約4280億円)もの巨額な利益を上げました。このことは、日本でも大きく報じられたようですね。
危機的金融状況の中、過去最高益を上げたゴールドマン・サックスのCEO、ロイド・ブランクファイン氏(画像は、同ニュースを報じる「ニューヨークタイムス」ウェブ版)。
その結果、社員のボーナスもかなりよかったと聞きます。世界に2万6000人いる社員の一人あたりの平均ボーナスは、62万ドル(6634万円)だったそうです。私も、ゴールドマン・サックスで働いていればよかった(笑)。でも、そんな彼らにも悩みがあるようです。「これほどのお金を、どうやって使っていったらいいのか?」と。ちなみに、私の会社を含む、ウォールストリートの主要金融企業のボーナスは、大卒1年目が8万ドル(856万円)くらいと言われています。基本的には、ここから毎年少しずつしか上昇しないのですが、会社の業績が良ければ、その年だけ高額のボーナスがもらえることがあります。しかし、逆に業績が悪ければ、ボーナスが増えないどころか、モルガン・スタンレーのトップのように、ボーナスを返上することを迫られます。ウォールストリートの掟は、単純なんです。
(構成/神林毅彦)
おまけコラム ウォールストリートのアナリスト事情(2)
スーパーリッチへのお勧め物件
本文でも触れたとおり、ウォールストリートのアナリストたちは、時に巨万の富を一瞬で手にすることがある。サブプライムローン問題を逆手にとって過去最高益を記録した証券大手ゴールドマン・サックスの場合、ロイド・ブランクファイン会長兼最高経営責任者(CEO)が今年受け取ったボーナスは、7000万ドル(約75億円)。米金融機関トップの報酬としては史上最高額と報じられた。そのうちの6割は、ストックオプション(自社株購入権)の行使だという。本文にもある通り、一般的な社員の報酬も莫大だ。そんな超高給を一個人がどう使うのだろうか?
しかし、心配無用だ。米ABCテレビは、「スーパーリッチのための贈り物」という特集の中で、「エリート・トラベラー」という雑誌が報じた10の贈り物を取り上げている。そのひとつに「洋上マンション」なるものもあるという(画面)。これは豪華クルーズ船の部屋を「分譲マンション」として売り出したもので、一流ホテルのフォーシーズンズがそのサービスを手がける。価格はワンベッド・ルーム・タイプの4億円から最高14億円のものまであるという。
「土地」がついていないことを忘れてはいけない、と付け加えているが、もしあなたが一攫千金を手にした際には、いかがだろうが。
ウォールストリートの“勝者”の憧れの的となるか?超高級洋上マンション。
2008/01/17UP
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