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ご存知のとおり、一時はITベンチャー・ブームで活況を呈した新興市場の株価が下げ止まらない状況だ。しかも下落は長期にわたり、06年1月のライブドアショック以降、投資家の不信感は新興市場全体に広がり、ほぼ全銘柄が売られて株価は下げ続けた。新興市場の代表格、東証マザーズ指数も、01年の指数算出開始以来の最安値が迫っている。では、そんな新興市場やITベンチャーに光明は見だせないのか? 今回は、そんなお堅いテーマを調査してみた。
今回、匿名を条件に大手証券会社社員や大手銀行の融資担当者、そして独立系ファンドマネージャーに話を聞くことができたが、まず口を揃えて言うのが「現状では、具体的な光明は見だせない」というシビアなお答え。そういう判断をせざるを得ないのは、投資家が、新興市場やITを中心としたベンチャーに期待を寄せられない状況が、長く続いているからだという。では、まずはそうなった理由を詳しく見てみよう。
大きくいって、原因は2つあるそうだ。
1つ目は、楽天、USENなど新興市場を牽引してきたIT企業群が、軒並み失速したこと。
2つ目は、それに続くべきミクシィなど新規上場組に勢いがないことである。
新興市場への期待感を崩壊させてしまった堀江貴文・元ライブドア社長
「楽天はこれまで倍々ゲームで売り上げを伸ばしてきましたが、07年12月期で失速しています。売り上げこそ5%増収でしたが、経常利益は304億円から24億円まで急減。特に証券や信販を含めた金融事業の失速が著しいんです」
こう指摘する証券会社社員によれば、楽天は借金しながら成長してきた企業。急成長している時は、借金がどれだけ大きくても吸収できるが、成長が鈍化した途端に経営に重くのしかかるという。
「楽天も、それはわかっているのでしょう。ですので、1年間で有利子負債を1300億円減らしました。しかし、それでも売り上げ2000億円に対して、有利子負債は4000億円以上あります。借金返済を最優先せざるを得ない状況です」
楽天には、1200億円を投じて取得したTBS株が「塩漬け」になっている問題もある、と言うのは大手銀行の融資担当者だ。
「現在、楽天が持つTBS株の80%は、融資している新生銀行が担保に取っています。それだけ担保を出さなければ融資は続けられない、ということです」
借金が重くのしかかるのは、USENも同じだという。
「昨年11月、金融機関30社が1200億円のシンジケート融資を組みました。当然、新規投資には制約がかかっているでしょう」(同)
さらに、金融事業に失敗したのは、楽天だけではなかった。
「GMOインターネットは、消費者金融事業進出が失敗しています。政府が貸し出し金利の引き下げに動き、業界に逆風が吹く中、GMOは次々と消費者金融業者を買収して進出しましたが、すぐに完全撤退を発表した。その結果、07年12月期のインターネット金融事業は、撤退による特別損失が膨らみ、実に124億円の営業赤字を計上しました。金融事業は、モノが介在しません。だからインターネットと金融は親和性がある。そういって新興企業が次々と金融事業に進出しましたが、金融はそれほど簡単ではない、ということです」(前出・証券会社社員)
ライブドアを代表とするこの時期の新興企業群は、積極的なM&Aで成長してきた。しかし、ライブドアショックで新興市場が暴落、凋落が続く今、ハッキリ見えてきたのは、ベンチャーたちの専売特許ともいうべき「拡大戦略」の頓挫だ。逆にいえば、本当に期待感の持てる拡大戦略を取っている企業を新興市場で見出せるかが、市場の光明ともつながるポイントとなるのだろう。
「事件化への危惧」というイメージを払拭できるか?
もうひとつ、今回の取材対象者が口を揃える市場低迷の理由が、「新興企業には、“事件化の危惧”が潜在しているというイメージが根付いてしまったこと」だという。つまり、ライブドアショック以降、実際に「事件化」するのではなく、ちょっとした報道が、事件化への危惧を増幅させ、市場への不信感を高めてきたことを指している。
たとえば、グッドウィル・グループも、そうしたイメージの定着に一役買ってきた企業だそうだ。昨年春以降、グッドウィルが介護事業、続いて人材派遣業で問題化したのは周知の通り。折口雅博会長(当時)は責任を取り、年末に代表権を返上、今年3月に会長を退任した。
しかし、これで一件落着とはいかなかった。退任翌日の日本経済新聞(3月12日付)は、折口前会長へのインタビューを掲載。その中で「クリスタルの買収に関連し、383億円が使途不明」と迫った。
グッドウィルは06年10月、大手業務請負会社クリスタルを買収、これで一気に人材派遣業首位に躍り出ている。買収は、グッドウィルが投資ファンドへ838億円を投資して、投資ファンドがクリスタルを買収する形だったが、クリスタルへは500億円しか支払われていない。差額の383億円は、どこへ消えたのか?
「この件は当時から司法担当記者などの間で問題視されていました。しかし口の端に上るだけではなく、日経が文字にしたインパクトは大きかった。折口前会長はやましいことはないと不正を否定しましたが、市場の不信は払拭できていません。同社の株価が回復の兆しを見せない一因でしょう」(前出・ファンドマネージャー)
新興企業は急成長の過程で無理が生じて、それが不正経理へとつながる例が少なくないし、闇勢力に付け入れられる隙もできやすい。「こうした不信感を払拭するのは容易ではなく、市場への上場および上場廃止基準の厳格化などの抜本的な改革がなされない限り、投資家の信頼は戻りにくい」(同)という状況は、しばらく続きそうだ。
期待を演出できない新規上場組
新興市場の期待を背負いつつも、それに応えきれていない笠原健治・ミクシィ社長
特に上場基準が甘いといわれる新興市場へは、次から次へと新たな企業が上場する。その中に、まさに市場を牽引する企業が出てくれば、それこそ市場の光明といえるわけだが、最近は期待値こそ高かったものの、勢いが続かないケースが多いという。
たとえば、楽天やUSENに続く新興企業として期待されていたのが、以下に挙げる1976年前後生まれの「76(ナナロク)世代」の起業家たちが立ち上げたベンチャーだった。
しかし、その代表格であるミクシィにすら、上場直後の勢いが出ない。
ミクシィは順調に業績を伸ばして、東証マザーズで時価総額首位へ上り詰めた。しかし市場のサプライズ、期待感を生み出せないでいる。
「06年9月に上場した時、投資家から70億円を調達しましたが、本社移転とサーバー増強へわずかに投資しただけです。1年半が過ぎた今も、投資家が期待して投資した資金をため込むだけでは盛り上がらないのです」(前出・ファンドマネージャー)
空騒ぎに終わった兄貴分たちの拡大戦略を見れば、同じ戦略は取りづらい。しかし、投資家が投じた資金を寝かせているだけでは期待が膨らまない。
ドリコムは、ミクシィより半年先に上場、76世代を牽引して期待を集めたが、上場後は赤字が膨らみ、今年3月に楽天の支援を受けたという。
「名目は業務資本提携ですが、誰が見ても、楽天にのみ込まれると見えるでしょうね」(前出・証券会社社員)
76世代企業のもう1つの雄、はてなは、上場の気配すら消えつつあるそうだ。
当初、76世代はイケイケドンドンの兄貴分に比較して、いい意味で「クール」と表現されてきた。しかし今、否定的な意味で「冷めている」と表現される。
「結局、兄貴分たちの拡大戦略に代わる新しい“期待の演出”ができていないことが、市場を牽引するほどの存在になれていない要因でしょう」(同)
新興市場は「わかりやすい企業」にこそ期待が集まる
新興市場は「期待」だけで盛り上がる。現在の新興市場やITを中心としたベンチャーでは、その期待が膨らまないことが、凋落の大きな原因ということだろう。
「しかし、市場が永遠に下げ続けることはありません。いつかは上がる。今の株価も、年明けの予想に比べれば底堅い。長く下落すれば、それだけエネルギーも溜まります」(前出・ファンドマネージャー)
新興市場は、決して複雑な市場ではないようだ。06年1月のライブドアショック以降、新興市場は下げ続けてきたが、中には急騰した銘柄もある。
1つは、M&Aアドバイザー事業のGCAホールディングス(現GCAサヴァアングループ)。06年10月の上場後、年末へ向けて株価は100万円から300万円まで急騰した。外国企業の買収を推し進める三角合併の解禁前夜に、期待が盛り上がった。
もう1つはディー・エヌ・エー。07年が明けて中高生の間で携帯電話サイト「モバゲー」の人気に火がつき、新興市場の秋の急騰の代表銘柄となった。ディー・エヌ・エーは夏から上げ始めたため、仕込む時間は十分にあった。
「新興市場で急騰するのは、わかりやすい銘柄です。わかりやすい事業、わかりやすい人気、わかりやすい演出。今後も、そうした企業が必ず出てきます。業績を分析するより、見た目の流れに乗るべきです」(同)
現在、国内市場は東証1部市場の下落が深刻で、新興市場の回復を期待しているどころではないとの空気がある。しかし、ITバブルが崩壊して国内市場が03年に底値をつけた後、先に上昇したのは新興市場だった。「今回も、東証1部などに先駆けて、新興市場が盛り上がる可能性は低くない」(前出・証券会社社員)というから、まず投資家に求められているのは、光明が差すのをただ待つのではなく、光明となるべき材料を自ら見つけ出す姿勢といえそうだ。
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>光明となるべき材料を自ら見つけ出す姿勢といえそうだ。
おっしゃるとおりです。
日本人の悪い癖か、悪いとの情報があるとすべてを同一視してしまう。
澤上篤人さんのお話を以前きいたのですが、受身でなく乗り出すときも必要。
ジリ貧のものに乗りかかり続けず、あらゆる情報から答えを探す。
ありがとうございました。
2008/04/29UP
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