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2008.07.17
洞爺湖サミットの主要議題として扱われた環境問題。かつて環境問題といえばボランティア的な精神で取り組むものであって、ビジネスとしては成立しにくいものとみなされていたが、潮目は変わったようだ。地球温暖化が実感されるようになり、また異常気象による災害も増加の一途。原油や穀物の異常高騰も続き、環境対策は性急な課題となっている。そこで株式市場の新テーマとして注目を集めているのが、環境銘柄だ。今回は、そんな環境銘柄の中でも、特に注目すべきものを調査してみた。
環境銘柄といってもさまざまで、火力発電の代替手段としての太陽光、風力発電関連、水資源の重要性の高まりから中東諸国を中心に需要が高まっている水処理を手がけるプラント業界、石炭火力発電施設やそのプラントメーカー、CO2排出権取引関連などが話題となっている。また、原油を消費しないという理由で原子力発電関係も今や環境銘柄の一角を占めるようになった。時代は変わったのだ。さらに個別銘柄だけではなく、証券会社からは、環境保全に力を入れている企業の株式を組み入れたエコファンドも多く販売されている。
では、環境銘柄は儲かるのか?少なくとも言えるのは、環境問題は企業にとって大きなビジネスチャンスであるということだ。エコバッグの流行に見られるように、消費者が環境に関心を持ち始めたのはもちろんだが、政府の環境に対する規制の強化が追い風になってくる。たとえば、来年施行の改正省エネ法では、コンビ二やスーパー、複数の事業所や工場を持つ中小企業なども規制対象となる。政府は空調設備の改修に優遇措置を設ける方針だと報じられており、今後、空調機器の需要が高まると期待されている。
左派陣営からは風当たりが強い原子力発電も、環境的視点から見ると、有望な事業ということになるようだ。次世代DVD競争で負けた東芝も、ここには一日の長がある。
当然、世界的にも環境重視の流れは強まっている。国連気候変動枠組条約事務局の試算によれば「2030年時点で温室効果ガス排出量を現在の水準に抑えるためには、世界で2000億〜2100億ドル(つまり21兆円以上)の追加投資が必要」としている。また、消費電力が低く寿命が長い白色発光ダイオードの需要が照明用途として今後広まってくると予測されているが、あるアナリストの推計によれば、全世界で21兆円の市場規模になる可能性があるという。世界的な水不足については、現在60兆円の水市場に対し、潜在需要で89兆円、25年には110兆円市場になるという観測もある。
世界的な規模で進む環境シフトに対し、金融情報会社フィスコでリサーチ部門を統括する伊藤正雄統括取締役は、「環境銘柄はすでに上がってきていますが、まだまだバブルとはいえない」と語り、今後も株価上昇の余地はあるとする。経済ジャーナリストの田嶋智太郎氏は、「最近、依頼される取材の内容は環境関連ばかり。サブプライム以降、不動産ミニバブルも弾けた今、株式市場のテーマは環境以外に考えられない」と話す。では、どんな銘柄が有望なのか?
次世代DVD戦争の敗者も、環境市場では勝ち組!?
「投資家にとって、取り得る環境対策とは、環境問題解決のために知恵を持っている企業を応援するということ」と語る経済ジャーナリストの田島氏。
田嶋氏は、こう分析する。
「われわれマーケットウォッチャーが今、何に注目しているかといったら、環境銘柄しかない。逆に言えば、環境問題に取り組んでいない企業というのは、投資家の関心を集めることはできないというぐらいになっています。
この間、次世代DVDをめぐる標準規格争いでブルーレイのソニーが勝ち、HD DVDの東芝が負けましたが、では、東芝株が有望ではないかというと、とんでもない。東芝は、原油に代わるエネルギー源として世界中でニーズが高まっている原子力発電所を造っている会社なんです。これからは、そういう視点で企業を見るべきなんです」
フィスコの伊藤氏も、次のように語る。
「資源の少ない日本は1970年代のオイルショック時に盛んに省エネが叫ばれ、技術を磨いてきましたから、この分野は世界的にも強い。環境は、各国が取り組まなければならない課題。昔から兜町の格言に『国策に売りなし』という言葉がありますが、環境はいわば“世界策”なのですから、どこまで買えるかは個別に判断しなければなりませんが、投資家は絶対に注目しておくべきです。環境銘柄は、上がっているのは間違いないですが、バブルといえる状況ではありませんから、まだまだ買える範囲です」
では、環境銘柄に対し、投資家はどのような姿勢で臨むべきか。田嶋氏は、環境関連銘柄では、長い目で見る投資態度が重要だという。
「当然、世界中でこれだけ環境問題に対する関心が高まってきているわけですから、優れた環境技術を提供できる企業の収益は伸びるはずであり、株価は上昇するに決まっています。ただ、今日、明日、環境銘柄がストップ高になるわけではありません。やはり中長期的な視点で投資に臨むべきでしょう。かつてITブームだとかバイオブームだとか、株式市場ではさまざまなテーマがあり、関連銘柄が暴騰しましたが、ブームが去れば、『兵どもが夢の跡』。それで今度の環境ブームもそれらと同じものだと思われるかもしれませんが、それは大きな間違い。これまでのブームは『なかったものを作る』ということで、手に入ってしまえばそれでおしまい。今回は、『すでにあるものを守る』ということですから、効果を実感しにくいんです。そのために、ITのときのようなバブルにはなりにくいんです。
環境に負担がかからないようにするために、私たちにできることは、とても少ないものです。エコバッグを使ったり、マイ箸を使いましょうといったこともいわれていますが、それにはたしてどれほどの効果があるのかという疑問の声もあります。投資家にとっては、環境問題解決のための知恵を持っている企業を応援するということが、それに貢献する一番の近道だと思います」
高い蓄電技術を持つ日本ガイシに注目
環境銘柄といってもさまざまな分野があるが、田嶋氏が最も注目するのが、太陽電池関連銘柄だ。
「日本企業の環境技術は世界一だと言っていいでしょう。今、一番注目されているのは太陽電池ですが、生産量で、Qセルズというドイツ企業がそれまで世界一だったシャープを抜いてしまった。その理由は、ドイツ政府が企業にも家庭にも補助金を出して太陽電池の利用を促進し、またQセルズの戦略見通しが優れていて、太陽電池の原材料であるシリコンを早い段階で抑えてしまって、逆にシャープはシリコンを調達しにくくなってしまった。しかし、シャープはQセルズに技術力で劣るかというとそんなことはなく、発電効率ではQセルズはシャープの足元にも及ばないのです」
では、具体的にはどんな銘柄がお勧めだろうか? 田嶋氏のイチオシは日本ガイシ。
「太陽発電や風力発電が環境に優しいのは共通した認識だと思いますが、問題は、それらの発電方式は空が曇ったり、風が出なかったりすると、出力が落ちてしまうということ。普及が遅れているのは、それも原因でしょう。そこで今、開発が進んでいるのが、NAS電池と呼ばれる、発電された電力を貯蔵し、必要なときにバッテリーとして電力を供給する大型電力貯蔵装置です。これを東京電力と共同で開発し、世界で初めて実用化させたのが、ファインセラミック技術世界ナンバーワン企業の日本ガイシ。これが、太陽電池利用の促進にもつながるでしょう。また日本ガイシは、それ以外にも太陽電池そのものにかかわる技術であるとか、燃料電池の開発も進んでおり、事業全般が環境に優しい企業なんです」
確かに太陽電池がいくら環境にいいとしても、天候によって発電量が変動するようでは、火力発電に本格的に代わる代替手段としては問題だ。それを解決する日本ガイシの蓄電技術の重要度は高い。
「もう1つは、石油元売りの昭和シェル。昭和シェルは、ガソリン高の影響で業績が思わしくないという報道もありますが、同社自身もそのことには危機感を持って、新しい分野への投資を増やしているんです。それが太陽光パネルの生産です。先ごろの発表で、昭和シェルは、2011年に太陽電池のパネルを生産する世界最大級の工場を建設することを明らかにしました。太陽電池といえば、シリコンを材料とするものが主流ですが、シリコンの値段は高騰しており、調達しにくい状況が続いています。昭和シェルは銅などの金属化合物でそれを製造する技術を持っており、今後の将来性に注目が集まっています。足元の業績は関係がありません。これからに注目すべきです。環境銘柄は、必ずしも足元の業績はよくありません。業績が悪いからこそ、新しい分野である環境に目をつけ、それを大きく育ててゆこうとしているんです」
写真用フィルムを生産していた富士フイルムが、デジカメの登場した危機感から、液晶用フィルムや医療画像等に事業構造を転換し、業績を伸ばしていったという先例もある。試練こそが、革新的技術を生むのだ。
「3つ目は、太陽電池製造装置を製造しているエヌ・ピー・シーという企業。太陽電池そのものは、日本だけでなく世界中で製造されていますが、太陽電池を作る装置は、日本がやはり世界一、というより、日本の企業しか提供できないといっても過言ではありません。太陽電池製造装置のメーカーは、いくつかありますが、その中でも足元の業績も良く、将来性も高いと評価されているのが、エヌ・ピー・シーです」
面白いのは水処理関連
フィスコの伊藤氏が環境関連銘柄として注目しているのは、以下の3つの銘柄だ。
「原油高でバイオエタノールが代替物として注目されていますが、バイオエタノールはとうもろこしなどの穀物を燃料にするので、発展途上国でこれから起こるだろう食糧難の時代にはマッチしない。
そこで株式市場でブームになったのが、原子力関連銘柄。株式市場で将来有望だとして注目を浴びたのが、米原子力大手、ウェスティングハウス・エレクトリックを2006年に買収した東芝と、三井グループで、原子力発電で使われる鋼材の世界シェアの8割を占める日本製鋼所。
もうひとつ面白いのは、水処理関連。水処理関連で代表的な銘柄が、超純水供給事業を柱とした栗田工業。売上高に占める水処理事業の比率は74%もあります。栗田工業は、水道水や井戸水に含まれるミネラルや鉄分などの物質を完全に除去する装置を製造しており、電力や半導体、精密機械製造分野での用途に使われています」
次の投資マネーの流入先として、優れた環境銘柄が多い日本市場が選ばれる可能性もあると見る、フィスコの伊藤取締役。
伊藤氏によれば、日本の株式市場は、世界的に見て、それほど悪くない環境にあるともいう。
「日本はサブプライムショックの影響をアメリカほど受けていませんし、また、世界的に見てもインフレ率が低い。去年までは新興国の株が上がりましたが、特にインドなどは成長力以上にインフレ率がとても高かった。ただ、各国の年金基金をはじめとして、マネーはいつでも投資先を探しています。原油先物がどうしてこれほど高騰したのかといえば、商品以外に世界に有望な投資先が見当たらないから、消去法で原油が選ばれたというだけのこと。商品バブルが終わったら、今度は日本株式が上がってくるシナリオも考えられます。現にここ数カ月は、ダウの落ち込みに比べると、日経平均はダメージを受けていません」
原油高で世界中が、不況下のインフレ、スタグフレーションに悩まされているが、原油バブルが終われば、日本の株式市場の出番がやってくるかもしれない。そのとき真っ先に注目を集めるのは、日本企業が世界にリードしている環境関連銘柄であるはずだ。
2008/07/17UP
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