「地球の歩き方」創世記(ac44150@circle) オーナーオーナー:地球の歩き方スタッフ
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 初めの一歩はこう踏み出しました。

 1979(昭和54)年、イランでは革命、ロシアはまだソ連で、原発事故やアフガン侵攻など世間が騒然としていたころ、「地球の歩き方」は誕生しました。同級生の歩き仲間は「ウォークマン」。「ドラえもん」と、世界のどこでもドアを開いて、多くの人と歩み続けてきました。...

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 2006年10月 

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2006.10.09


 航空会社や代理店との交渉で痛感したのは数のパワーだった。あくまでも団体旅行を企画しないといけない。団体という以上、最低人数を確保しないといけない。数がまとまれば単価はぐっと安くなる。
 企業や団体に提案していくモデルは成約すれば大きいが、成約しなければゼロの勝負だ。催行したい日付も集中する傾向にあり、航空会社が欲しがる閑散期にあてはまる案件は少ない。一般に人気がないから閑散期。当然のことなのだ。

 ここでビッグ社は収益モデルの転換をする。法人相手の営業だけでやってきた会社が、個人相手に範囲を広げる。個人相手となると、テレビや新聞などマス媒体を使って、消費者に直接訴えかける広告が必要になる。莫大な広告予算がかかってしまう。中小企業の常ならここで諦める。
 しかしビッグ社には媒体があった。数十万人をマスとは言い切らないが、その塊は不特定ではなく、はっきりと大学4年生という属性の明らかな集合だ。しかも卒業したら就職することもはっきりしている。このチャネルは使える。世を上げて「国際化」の時代に、先鞭をつけよう。語学を習得するのもいいけど、行動の自由と豊かな感受性を得るため、自由な旅をしよう、他にはないチャネルにそういうメッセージを流し始めた。「お金はないけど、時間はある」学生には、一般の閑散期こそ、グッドチャンスなのだ。
 自分が旅をした経験、語学研修で送った人たちの体験、それらの蓄積をレジュメにまとめる。それを印刷して配るのだが、タダでばら撒いてはダメだ。かならず説明会に来てもらう。講演会を行なう、スライドを見せる、顔を見ながら訴えるのだ。


 こうして「DST:ダイヤモンド・スチューデント・ツアー」が動き始めた。
 実際に学生を集めると、いろいろなニーズが理解できる。
「ヨーロッパを周遊したいのですが、書き込める地図はありませんか」。そんなリクエストがあれば「白地図」を用意して配ってやる。表記はどうする? 余白に何を置く?そういった一つ一つがノウハウとしてたまっていく。
 「映画上映会」「会話カセットテープ」「カタログ」……。これらも、そうしてできた手作りのツールだ。いずれもお洒落なものではない。急造品もあるし、不確かな記述もある。今の時代だったら、非難轟々、場合によっては訴えられ兼ねない代物もある。しかし、この「熱さ」が学生たちの心を揺さぶった。
 「『会話カセットテープ』があるって友人に聞きました、ぼくも欲しいんですけど」
 「さしあげます。霞が関のダイヤモンドビル、10Fホールで行なう説明会に来てください」
 「前にもらったヨーロッパの白地図に旅程を書いてみたんですけど、チェックしてもらえませんか」
 「いいですよ。説明会と同じビルにDST事務局があるので来てください」

 呼び込めたら百発百中の口説き術がフル回転する。不安だらけの学生に、出国するところから、自由な旅行のノウハウを教える。みなは教えない。
 「まずはロンドンまで一緒に行こう。そこでガイダンスをするから、安心してヨーロッパを歩けるよ。何週間後にパリで会うときは、もう今の君じゃないよ」
 「アメリカは果てしなく大きいよ。誰も歩いていない道を踏みしめようよ。サンフランシスコでお別れだけど、ニューヨークで会うとき、君って判るかなあ」


 こうして多くの大学生が旅立ち、大きくなってキラキラとして帰国してきた。そんな仲間から、ぽつりぽつりと、旅人たちがDSTに留まり始め、集団となった。組織というより、既成概念を壊すゲリラ部隊という方があてはまる集団だ。光も、熱も、自分を解き放つエネルギーも、すべてを溜め込み、渦を巻き、ガイドブック出版という新星を作り始めた。
 いつの間にか、「歩こう地球。」というカタログ名が、くちコミで浸透していった。

 まだ一冊の本も刷り上ってはいなかったが、安松の頭にも、DSTの客分たちの心にも、はっきりと見えてきた。シリーズ「地球の歩き方」がずらりと並ぶ、書店の棚の姿が。


(第一部 了)


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2006.10.09 13:36:44

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