「地球の歩き方」創世記(ac44150@circle) オーナーオーナー:地球の歩き方スタッフ
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サークルの紹介

 初めの一歩はこう踏み出しました。

 1979(昭和54)年、イランでは革命、ロシアはまだソ連で、原発事故やアフガン侵攻など世間が騒然としていたころ、「地球の歩き方」は誕生しました。同級生の歩き仲間は「ウォークマン」。「ドラえもん」と、世界のどこでもドアを開いて、多くの人と歩み続けてきました。...

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 2006年7月 

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2006.07.30



──そうこうして...ヨーロッパに渡りますね。どんな感じで大西洋を渡ったんでしょうか

安松 当時の日本人にとってヨーロッパは先進国。1ドル360円の固定レートの時代でしたから、日本は経済も含め大きな遅れがあると思っていました。
 でもね、いちばん遅れていたのは文化というのか、生活や社会のなかで人間同士の信頼関係がすごく違っていたことです。


──人と人との信頼性の深さが、日本にはなくって、ヨーロッパにあったということですか。

安松 そう。まずビックリしたのは市電や市バス、車掌さんが居ないんだよね。検札なんかないけど、みんなキップ持って乗っている。電車や汽車も改札口がないから、誰でも電車に乗れちゃう。長距離列車はさすがに検札があるけど、それも疑いを持ってやってくるのではなくて、困ってる人はいないか〜、みたいな気持ちで回ってくる。だからユーレイルパスなんかを財布から出そうと手間取っていると「サンキュー」なんて行ってしまう。


──チケットを持って乗っているのが当たり前 っていう前提ですね。

安松 性善説っていうか、絶対に性悪説では考えていない。いつも相手を、人間を信用している。信用を前提にした社会なんですね。
 いちばんビックリしたのは、汽車で向かいに座ったおじさんがボクのカメラをみてうっとりしてる。いくらぐらいの物だ、と言うので日本円で10万円ぐらいといったら、ふーんと言って、保険はかけているんだろう? と言う。ボクは、日本ではこういう物に保険をかける習慣はないので、保険はかけてないよ、だって保険かけたとして、もしボクが新しいカメラが欲しくなったら、わざと失くすなり壊すなりすれば、新しい物が手に入っちゃうじゃないの。と言った。そしたらおじさんは、すごく困惑した。そして「そんな人はいない」と、ひと言だけ言った。


──うーん、身に染みますね

安松 それを聞いてボクはとても恥ずかしくなった。日本人がみんなボクのようだと思われたらどうしようと。ここでは人間はウソを言わないんだ。本当かウソか疑ってみることはない、騙したり騙されたりすることはない世界なのだと。そして日本はどうなんだ、みんな、誰かが悪いことをしていないか疑いの目で生きている、まだそんな社会なんだと。


──こうした「信頼を前提とした社会」という「居心地がいい世界」が体験できたわけですね。

安松 そうだね。旅もとてもし易い、長居もしたくなる。まさに旅行者天国です。
 一方で、信頼関係があるから、車掌さんのいないバス、検札のない市電、改札口のない鉄道駅が成り立つわけで、旅行者もこの信頼が前提の世界を守っていく義務や責任がある。こういう自覚が旅行者にも求められてるんですね。
 また、こういう信頼社会では、どこかに悪いやつがいるかもしれないとか、騙されるとか思って旅をしてはいけない。困った時は素直に助けてもらう。という考えが大切なんだと思ったね。ヨーロッパは、複雑な国境があって、いろんな人の行き来があるの慣れているから、旅行者をどう遇したらいいのかを知っているんだ。そういう世界で、肩肘張って殻に閉じこもったままで旅をしても、何も得られない。
 ボクがこういういい体験が出来た背景には、出発前にある先輩から、「ヨーロッパはね、朝公園のべンチにカメラを置き忘たことを、夕方気づき取りに戻っても、そのままおいてある。それがヨーロッパなんだよ」と聞かされたことにあると思う。
 その先輩も、「残念ながら、そのヨーロッパ世界も、いまは外国からの移民労働者が入ってきて、少しずつ崩れているけどね」と、残念がって言ってはいたけど。あれから30数年経た現在のヨーロッパは、もっと大きく変わっていると思う。悪い方にね、くやしいけど。
 でも、出発前にそう聞いていたボクは非常にラッキーで、そういう目でヨーロッパをみて、そういう感覚で歩いていた。それが結果的に、非常にいい旅行体験を呼び寄せたんだと思っています。


──そういう気持ちで旅を続けると、見えるものが変わってくる?


安松 そう。いままでは、○○○を見なくてはとか、行かなくっちゃ、っていうことが目的化していた。そんなに予備知識はなかったけどね。ああ、エッフェル塔に着たぞ みたいな。そこまでの道のりの印象がないんだ。どんな人がいたとか、何を食べていたとか。
 それが、ある時から、殻が破れたんだろうね。エッフェル塔の例でいえば、フランスの人はエレベーターに乗らないで歩いて登ってるみたいだぞ とか 登っている人と話しをするとか、その人がもっと楽しい情報を分けてくれたりとか。そういうふうに変わってきた。乗り物も、電車でなくバス、さらには、歩けるなら歩くというようになった。


──これがもしかして「目線は低く」?

安松 そう。街の雰囲気は電車では分かりにくい。バスならみんなが暮らす道を進むから様子が分かる、でもちょと視点が高い、見下ろしている。車窓からは音も聞こえないし、臭いも伝わってこない。そこで「旅の目は低いほどいい」という旅のセオリーが出てくるんです。
 旅先だから何が起きるか分からないという気持ちは持ちながらも、あまり気負わず、リラックスして、でも好奇心を持って、歩いてまわるのが、いい旅の基本であるような、そんな気がするね。これは今でも同じだよ。


 「たび」はやまとことば。大陸や半島からきた言葉ではなく、日本古来からあった単語だと聞いたことがある。
 この「たび」に「旅」の漢字を当てるが、「多鼻」と当てる例もあるらしい。五感を総動員して、あたりの様子をうかがう様子がよく分かる当て字だ。まさに「目線は低く」の精神そのものではないか。


【次回 第十話は、8月中旬ごろ掲載予定】


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2006.07.30 11:07:26

2006.07.04

──お話のなかに「旅にたいそうな準備はいらない、いまあるがままにふらりと出かければいいんだ」という極論が見えるんですが。

安松 必要なのは好奇心。人間とその営み対する尽きない好奇心があれば他には何もいらない。
 誤解がないように先に言っておくけど、お金はあるに越したことはないし英会話だって出来ないより出来た方がいい、海外に対する知識だってあった方がいい。でもそのためにいたずらに時を過ごすと、肝心の好奇心の方が薄れてくる。そのくらいなら今膨らんでいる好奇心をそのままに出発してしまおうと言うことです。
 だから当時のボクは、意識的に 「お金は要らない、英会話も出来なくてよい。海外に対する特別な知識、ましてや、旅のマナーや礼儀作法なんかは知らなくていいし、ガイドブックだって百害あって一利無し。なんの準備も要らない。そういうないないづくしの旅がいい結果を生む」と極論を言ってきました。それは今も変わらない。


──それで若い人たちが、ないないづくしで出かけたんですか?

安松 ボクらがやってたDST(ダイヤモンド・スチューデント・ツアー)というツアーはヨーロッパやアメリカに着いたところで2泊のホテルだけ付けていて、この最初の2日間は現地の街を舞台にオリエンテーションをやったんです。それで3日目に解散して放り出しちゃう、30日とか40日後にパリやロスに集合しなさい〜とバイバイなんです。まるで「泳ぎを教えてあげる」と言ってプールの真ん中に連れて行きそこで手を放しちゃう、そんなことをやっていたんです。
 でもね、パリに集まってくる若者たちは真っ黒に日焼けして「俺はやったぞ!」と自信満々、大満足で帰って来たんです。それはね、ヨーロッパに住む人々のホスピタリティに助けられて、土地に根付いた旅ができたということなんです。
 もっと言えば、始めから彼らにはやる力があったということ。それを旅行会社が作ったガイドブックや旅行説明会に行くと、ヨーロッパ言語の一つくらいはマスターして十分なお金と日本人として恥ずかしくないマナーや教養をもっていないと自由旅行なんか出来ない、とウソを教えられていたんだ。


──そうすると、安松さんの最初の旅というのは、そういうカラクリを知って出かけたんですか?

安松 いやそんなことはない。ボクは本当に何にも知らなかったし、急に会社から渡された航空券で出発することになったから、結果的にないないづくしだったのです。それでもボクはいい旅が出来た。これ以上の旅はないというぐらいだったし、その後も何回かアメリカ、ヨーロッパに行っているけど、その時を越える旅はいまだに出来ていません。
 こういうとみんな信用しないのでボクの最初の旅がどんなに無知で無茶苦茶だったかという証拠話をしますね。
 サンフランシスコからグレイハウンドのバスに乗ったボクの最初の行き先はLAだった。それはそこしか知らなかっただけなんだけど...。
 ところが、バスに乗ったら一人の日本人が居ました。彼に「どこまで行くの?」と聞いたら、彼は「様子見て」と答えた。グレイハウンドの周遊券は、行き先が書いてない切符の束で、乗る駅で行き先都市を書き込んでもらいます。
 実はボクも、周りの様子を見て気に入るようだったら降りる、そんな買い方がないかなあと思っていたんです。そこで「様子見てって、それはどういう英語で言えばいいの?」と聞いたら「ただ、ヨウスミテ、ヨウスミテと言えばいいんだ」と言うのです。ボクは、様子見てという英語は、日本語と一緒なのかと思ったんです。
 まもなく彼がバスを降りました、そこにはヨセミテ・ナショナル・パークと書いてありました。
 当時のボクはヨセミテ国立公園を知らなかったんですね。だから「ヨセミテ」が「様子見て」に聞こえてしまったんです。そんなボクが、英語もアメリカのことも何も知らないボクが、旅に出てきてしまったんですよ。


──そんな「様子見て」の安松さんが、結果的には最高の旅だった、ということで自信を得た。
 
安松 そう。だからボクは「旅は案ずるより生むが易し」と言ってるんです。始めはみんな不安でいっぱいなんですね。でも必要なのは、不安を乗り越える好奇心だけ、好奇心が旺盛な人はきっと誰でもいい旅が出来るんです。この確信が、DST旅行の説明会になり、「地球の歩き方」なっていたと言うことですね。

【次回 第九話は、7/20ごろ掲載予定】


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2006.07.04 18:20:09

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